2023年9月1日

新型コロナウイルス感染症に関する会長からのお願い

今は感染第9波の真最中、医療逼迫を避けるためのお願い

 人々の間に笑顔が溢れ、街に活気が戻ってきました。コロナ前に戻ったというよりも、コロナを契機に新たな時代が始まった予感がします。3年間諦めずに懸命に頑張ってきた皆様に敬意を表します。しかし、世間ではあまり話題にならなくなりましたが、9月現在愛媛県下は新型コロナ感染第9波の真っただ中におり、私たち医療現場はその波に翻弄されている最中です。感染症法上の取り扱いが2類相当から5類に変わったことで「全数把握」は出来なくなり、毎日の発表が週1回に後退しましたが、県内61カ所の定点医療機関からの報告によって流行状況の概ねの把握が可能です。

 また先日、私の診療所では若い患者さんで「3回目のコロナ」と言う方もおられました。1回かかれば大丈夫というのは迷信です。罹患しても免疫が維持されるのはせいぜい半年くらいです。ウイルスも少しづつ型を変えてやってきます。

 感染第8波・第9波は第4波・第5波に比べ、死亡率が4%から0.5%弱に低下したものの、感染力が強いため患者数が桁違いに多くなり、結果として死亡者数は第4波・第5波を上回る勢いです。死亡率が下がって軽くなったとは言い切れないのです。このため、医療機関ではさまざまな局面で医療逼迫・渋滞が起こっています。患者受け入れ困難・診療科縮小・予定手術延期などです。高齢者施設でクラスターが発生するとパニックになることもあります。お盆やお祭りの状況を見て、完全に気が緩んでいると思われます。マスクを着用したほうが良いと思われる局面でもマスク着用者は減り続け、店頭に置かれている消毒用アルコールを使用する人も明らかに減っています。多くの人の心構えが変わってしまったようです。5類に変わってもコロナウイルス自体は何も変わっていないのです。普通の風邪とは全く異なります。

 高齢者や基礎疾患をお持ちの方はワクチン接種を積極的に考えてください。この3年間で明らかにゲームチェンジャーと呼べたのはワクチンだけです。仮に罹患しても重症化予防に役立っています。ワクチン接種はご自身を守るだけにとどまらず、医療逼迫を予防するためにも役立っています。若い人にワクチン接種を強制することはできませんが、高齢者を守るため、社会を守るためという着眼をお願いしたいと思います。「若い人は罹っても重症化しないと判っているのに、重症化予防のためにワクチン接種を」と言うのは論旨が破たんしているという意見があることは承知しています。しかし、若い健康な人がコロナに罹患して重症化し脳脊髄膜炎を併発して重い後遺症に悩む例や心筋炎を併発して心不全で生活の制約を受ける例が報告されています。ご自身を守るためにもワクチンが有用です。

 第9波は9月がピークになるものと思いますが、10月の地方祭で大勢の接触が避けられないためM字型に再拡大する恐れも排除できません。そして、この冬には必ず少し型を変えて第10波がやってくることを覚悟しなければなりません。

 「感染患者数を減少させることこそ最大の経済対策である」とかねてから申し上げています。感染対策を徹底することと社会経済活動を回していくことは相対峙した概念ではなく、両立できる目的であり結果であると確信しています。皆で力を合わせて難敵であるコロナを克服し、手を携えて一緒にゴールを切れることを願ってやみません。基本的な感染回避行動の徹底をお願いいたします。